300名山紀行

皇海山(すかいやま)2143.6m)  袈裟(けさ)丸山(まるやま)1878.2m

                              

2009年5月30日〜6月1日         山行者 5人

 

【5月30日】 

皇海山

 

皇海山の前山の庚申山(こうしんやま)は、徳川の時代関東では有名な信仰の山で庚申講登山が盛んだったそう。猿田彦の神が祀られている。そこから11の鋸状のピークを越え鋸岳へ達し、その奥にある皇海山山頂が奥の院となっている。栃木群馬の県境にある地味な山であまり知られていない。昔は「笄山(こうがいやま)」と呼んでいたのが当て字で「すかいやま」になったそう。足尾銅山の町にある。

 車は雨の中を5時に出発。IC太田で降り登山口の銀山平には、13:00に到着出来た。雨は小粒ながらも降り続いている。車止めゲートから川沿いの林道を1時間ほど辿ると猿田彦神社の赤い一の鳥居に着く。ここから山道が登っている。沢沿いの歩き易い道、クワガタソウが点々と咲いている。

 広い台地状に到着。一面葉だけ野菜畑のようなクリンソウの花畑がある。数本が咲いていた。外人のペアが登って行く。ここは神社跡で「当山開祖木村惟一」の碑がある。行場巡りの道が右に分かれている。ここから少し下った所に、大きな建物「庚申山荘」があり、町営で管理人は常駐していないが素泊まり2000円、2階建てホテル並の大きさである。フトンが積まれ、東京からの若者が2人のみ。庚申山へ登ったツアー客20人程が下って来た。雨で途中までしか行けなかったそう。その後も幾人かが下って行った。泊まりは若者と我々のみである。

 

【5月31日】 雨は止んでいたが、黒雲が覆いどんよりとしていて展望は望めない。小屋のすぐ後ろに立ちはだかっている庚申山が見え隠れしている。

溶岩状の巨岩が覆い被さるように立っている間を摺り抜けるようにして登って行く。はるか上の方の巨岩の間から流れ落ちている滝の裏側にコースがある。裏見の滝である。幾つもの仏像が祀られている。巨岩奇岩をくぐり、ハシゴや鎖場をたどって行く。ここは庚申講時代の行場であり、行場巡りコースになっている。希少種食虫植物のコウシンソウはこの辺りで、6月頃咲く花。

 庚申山の山頂は狭い山稜の岩場の中にあった。展望は無い。ピンク色のアズマシャクナゲが今を盛りと咲き誇っている。真っ赤なツボミも鮮やかに映えている。シロヤシオが霧の中に満開に咲いている。赤いミツバツツジが所々に見られる。丁度花の見頃の時期に当たり、狭い岩陵は賑やかに華やいでいる。

 ここから11のピークの鋸山が続く。皇海山が谷を隔てて望める場所であるが、沸きあがるガスの為見えない。薬師岳・地蔵岳・蔵王岳・熊野岳などピークにはそれぞれ名前がつけられている。両側のガレ落ちた細陵を登り、垂直な岩場を鎖で下り、ロープで登りハシゴを下り、濡れた岩場は緊張の連続。やっと最後のピーク鋸山に到着してホッとする。

 コースは北に向きを変え、大きく下って行く。沢筋の30mほどの垂直な岩肌は、ロープを伝って滑り降りて行く。30分も下って行くと不動沢のコルに着く。ここは不動沢から登って来るコースがあり一般コースになっている。今ツアー客20人ほどが下って来ている。何人かがまだ登って来ている。

皇海山への最後の登りにかかる。笹が深くなり、雨粒が大きくなって来たので雨具をつける。オオシラビソの針葉樹の大木に包まれている地域に入って行き、奥深い山域にやって来た感じがする。最後の急登で息を切らしていると、小屋で一緒だった若者2人がもう下って来ていた。銀山平を朝3時に出発した単独人が後ろから追い抜いて行く。

傾斜が緩やかになった所で、岩の間に大きな青銅の剣が立っている。この辺りが奥の院なのであろう、やがて山頂に到着する。樹林に囲まれた広場の中に三角点があり、登山者は一人。赤城山・日光白根山・谷川連峰が見えるそうであるが、ガスで全く見えない。雨で寒い為早々に下る事とする。

鋸山までは往路と同じ。ソロソロとガスが切れて来て、鋸岳の全貌が現れて来る。なるほどコブが幾つも立っていて、最後の鋸山は槍の穂のように突っ立っている。その穂に向かって、赤いヤッケの若者が2人、青いヤッケが一つ忙しげに登って行くのが眺められた。

鋸山の頂きからはガスも明け、今登って来た皇海山がずっしりと重々しく眺められた。ここからの往復に3時間もかかった。鋸山から六林班峠まではルンルンと思い気や、腰までの深い笹原にはばまれ、1時間も続く。さらに峠から山荘までの巻き道は、急斜面のトラバース道。至る所で抜け落ちて、細い道が2時間も続いてウンザリとする。しかしこのコース、満開のシロヤシオの群落が2時間も続いている気持ちの良いコース、白いダケカンバの林、カラマツのグリーンの林、飽く事の無い光景が続いていた。

山荘で荷物を纏め、銀山平の車の所にはやっと17:00に到着する。13時間もの長丁場であった。車に乗って移動していると、待っていましたかの如く雷を伴った大雨が降り出して来た。雨を避け、足尾銅山跡の第三セクターわたらせ渓谷鉄道「沢入(そうり)駅」に逃げ込む。待合室にテントを張る事が出来た。

 

【6月1日】 

袈裟丸山

 

袈裟丸山は皇海山の南の尾根続きにある山、アカヤシオ・シロヤシオ・ツツジ・シャクナゲなどが名物だそう。塔ノ沢登山口の駐車場に車を置いてから出発する。雨は止み、雲も切れて来て青空が覗いている。天気は良くなりそう。車が一台到着してくる。

 谷沿いに登って行く。沢筋にはクワガタソウが多い。小さな小鳥、ミソサザイが小枝の上で囀っている。朝の沢は気持ちが良い。何回か渡渉を続けながら少しずつ登って行く。角張った巨岩を積み木のように積み上げた石塔が多い。

1時間ほど登って行くと、ここの名所、寝釈迦像の標識がある。小高い岩の上に、5~6mものお釈迦さんが、北の方向に頭を少し下げて天を向いて寝ていらっしゃる。ツルツルの自然の御影石に美しく彫られている涅槃像である。鎌倉か江戸の時代か年代作者などは不明と言う。どのような云われがあったのであろうかとしばし昔に思いを馳せる。上に行くほど大きい石になっていると言う「相輪塔」もあると説明板に書かれていたが、崩れているのか確認が出来なかった。

 賽の河原のある稜線に上がり込む。ここまで2時間。別のコースからの登山道が合流していて、幾人かが登って来ている。溶岩の丸い石が河原に幾つも積まれている。弘法太子が泣き叫ぶ子供達を慰めたと説明が書かれていた。

 稜線は広々とのんびりとした笹原が広がり、ダケカンバの林の中にここもシロヤシオの群落が満開に咲いていた。シャクナゲは皇海山よりは幾分少ないが、綺麗に咲いている。オオカメノキが白い花を散らしていた。

最後の山頂への登りはダケカンバの中の急坂を一登りで到着する。一等三角点の山、数パーティが休みまだ次々と登って来ている。展望の良い山、南の方の眺めが良い。なだらかな丘陵の奥は赤城山であろう。ここは前袈裟丸山山頂で、この山域の最高峰はさらに稜線を北上して後袈裟山となっている。途中山陵が崩れていて登山禁止となっている為、一般的にはここが山頂のようである。暑いほどの日差しの中少しゆっくりとする。

往路は同じ道を引き返して下って行く。まだ幾つものグループが登って来ている。人気の山、シロヤシオがお目当てなのであろう。雨はすっきりと止み気持ちの良い気候になっていた。

駅の待合室が温泉になっていると言う水沼駅で一浴してから帰路に着く。高槻には23時に帰り着いた。

 

5/30 高槻(5:00)=銀山平(13:00)―庚申山荘(16:00)

5/31 山荘(4:35)―皇海山(9:45)―山荘(15:00)(銀山平)(17:00)

6/1  塔ノ沢登山口(5:20)―袈裟丸山(10:15)―登山口(13:40)