300名山紀行

        佐武流山(さぶりゅうやま)(2191.5m) 

 

2009年10月30日         山行者 4人

 

 長野・新潟の県境尾根が群馬にかかる辺りの山深い渓谷に囲まれた川沿いに、(きり)(あけ)温泉がある。秘境秋山郷のさらに奥、最奥の地に温泉宿が数軒あるのみ。この山の登山口はここから始まっている。最近まで登山道が無く、北隣の山・苗場山から、また南の山・白砂山から尾根伝いに達する往復登山しか無く、200名山中最難関の一角であったそう。地元の人達により2000年にルートが開拓され登り易くなったと言う。

 温泉のすぐ上、国道から入った林道入口ゲート前で前泊する。5:40薄明かりの中を出発する。単独の登山者があいついで二人出発して行く。さらに一人追い抜いて行く。林道は大型トラックが通れそうな程の広い道路が川沿いに深く長く続いている様子。周りは総てカラマツ林で、黄色く色付き紅葉が美しい。落ち葉がうず高く道路を埋めている。このあたりは国有林で植林の為の道であろう。

 林道を1時間ほど歩くと、前方上部に垂直に切り立った岩壁が見えてくる。月夜立岩と呼ばれ、月を鏡のように映すのであろう、テカテカと光る大きな鏡のような大岩が立ちはだかっている。その先が沢への下降点で、大きく谷へ下る。

 下った所の川の渡渉点には対岸へロープが張られていた。巾20mほど、靴を濡らしながらも飛び石伝いに渡れそうであったが、我々は靴を脱いで渡る。膝下くらい、身を切るような冷たい水であった。

 ここから急登が始まる。最近開拓された道のごとく、細い微かな道が登って行く。カラマツの林が終わり、シラビソの林となる。径は50cm程、どの木も大きい。コメツガの大木、ゴヨウマツの大木、背の高いダケカンバ、葉を落としてしまって赤い実だけのナナカマドの木、どれも大型である。

 一直線の登り、2時間ほどの格闘でワルサ峰に着く。ここからは両サイドのガレ落ちた痩せ尾根になり、名前の通り悪い。展望が開け、直ぐ近くに苗場山の広々とした台場の全容が望まれる。深田久弥が言う、普通の山は尖っているのに苗場だけはまるで鯨の背のようにその膨大な図体を横たえている。正にその通り、大空を大きな鯨が泳いでいるようある。

 痩せ尾根の岩場には、アカミノイヌツゲが赤い実を一杯に着け、道沿いにしばらく続いている。斜面には大木が多数見られる。ヒノキに似ていたが、総てアスナロであった。

 土砂が崩れ、大きな木の根と岩だけとなっているような尾根を登って行く。シラビソの林となり斜面を巻き気味に登って行くと、苗場山への分岐点に着く。成る程、苗場山への道のほうが立派である。下山時に間違えそう。単独行者は早い、もう次々と下って来ている。尤も3人だけではあるが。

 ここからは水の溜まった地塘もあり、シラビソの樹林帯の歩き易い道がゆっくりと登っている。1時間ほど登るとその林の先に少し開けた広場があり、そこが山頂であった。立派な標柱が立っている。はるか彼方、奥深い山又山のその奥の山に今立っている事に感激が一入である。良くぞこんなにも奥深い山が未だあったものかと感心する。樹林に囲まれ展望は得られなかったが満足である。

下山は同じ道を下って行く。

 

切明(5:40)―渡渉点(7:20)−ワルサ峰(9:15)―佐武流山(11:05)―切明(15:30