300名山紀行     経ケ岳 2296.3m

 

 2010年10月22日         山行者 5人

 

 中央アルプスを木曽谷から伊那谷へ抜ける道に権兵衛峠道がある。その峠から盛り上がった所が経ケ岳で、慈覚大師がお経を納めたと伝えられている信仰の山である。中央アルプスの北の端、高速道からも眺められる形の良い山、麓にある仲仙寺から登山道が始まっている。標高差が1400mある長い登りになっている。

古刹仲仙寺は羽広観音とも云われ、その裏側は鬱蒼とした樹林の中の道で見事な
赤松の林が続いている。今年はキノコが豊作、色々なキノコが沢山あちこちに見
られ、今も車が入っていてキノコ取りの人達と思われる。松茸もありそう。


坦々とした歩き易い道がユックリと高度を上げて行く。やがてカラマツの林になり、落ち葉の埋まった感じの良い道が登っている。程良く紅葉していて美しい。
四合目で古い林道が合流している。五合目は林の中、七合目は尾根を飛び出した展望の良い所、伊那の町並と南アルプスが眺められた。標識もしっかりとしている。単独行者が二人下って来ている。かなり早い速度である。

 カラマツの林は山頂近くまで広い範囲に見られ、又今見事に紅葉していて光に当たり赤く輝いて綺麗である。カラマツの落ち葉の道は歩き易い。

 ユッタリとした道は山頂まで続き、ユックリの登りで山頂に到着する。展望は樹林越しの為あまり良く無いが、南アルプスが一望である。幾つかの板状の石碑が数本立てられ古い信仰の山である事が伺われる。

 下りは同じ道、歩き易い道の為滑るようにして降りてくる。松林の中では地元の人がキノコ取りを終えて帰る所であった。松茸は無くて、白っぽいスギ茸のようなものが大量であった。

 今夜は仲仙寺の駐車場にテントを張る。

八合目の紅葉       山頂









 

羽広(9:30)—経ケ岳(14:05)羽広(16:45)

 

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      有明山 2268.3m   2010年10月23日

 

 北アルプスの前衛峰の為、以前から行きそびれていた山である。表銀座入口の中房温泉から北アルプスに背を向けて登って行く。独立峰の為、形が良くて安曇野富士・信濃富士・有明富士などと呼ばれている。一気登りの傾斜のきつい山である。有明山荘の裏手から登山道は始まっていて、こちら側は裏参道になっている。今、一人の登山者が先行して行った。

 いきなりの急登が始まる。花崗岩の山で岩場が多く、コメツガ・シラビソなどの樹林帯とシャクナゲが多い。大きな岩が立ちはだかり、それを避けるように登り道が上がって行く。丸太を連ねたハシゴもある。朝早くの登りはすがすがしくて気持が良い。ピッチも上がる。本日は快晴でまことに良い天気、青い空が一杯に広がっている。高々とした山稜に朝日が差し込み、暗い山襞が次第に赤くなって行く。白くザレた瓦礫の山は燕岳であろう、深い谷を隔てたはるか高い場所に山小屋が見える。

 一刻激しく登ってから巻き道に入る。屏風のような巨大な岩壁に、危なかしそうに巨岩が垂れ下がっている。その下を細道が上がったり下ったりしながら斜面をへつって行く。見上げれば崩れそうな微妙な位置に巨岩が停まっている。「落石注意」の標識もあり、雨の日には恐い事であろうと思う。右に左に上に下にと複雑なコースになっていて、ルートの選択に疲れる。

 急斜面に垂れている連続するロープを何本か登って行くと、やっと尾根に出て来る。青い空の下に双児峰の形の良い山が正面に見られる。特長のある山、鹿島槍であろう。後立山の総てがそして表銀座の大天井岳・常念岳まで北アルプスの峰峰がくっきりと眺められた。さらに続いて青い空に浮かんでいるのは、妙高連峰の山々と浅間山の峰であろう、ぐるりと見渡せた。

さらに痩せ尾根を少し登ると山頂であった。鳥居と有明神社の奥社が祀られている。ベンチがあり展望台になっている。神社の裏手を少し進むと三角点があった。南の方角はるかかなたに鮮やかに大きな富士山の姿があった。さらに八ケ岳と南アルプスであろう、真に展望の良い場所である。太平洋から日本海までの総ての山々が一望である。天気が良くて良かった。ゆっくりと景観を楽しむ。

下山は同じ道を下って行く。急斜面の連続で落ちるようにして下って行く。登って来ている幾つかのグループに出合った。登り4時間半、下り2時間、登降の激しい山であった。降りてから、源泉100%掛け流し中房温泉露天風呂でゆっくりと汗を流す。気持の良い、スカッとした山であった。 

 

 有明荘(6:15)—有明山(9:30~9:50)—有明荘(11:50)

 

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安平路山 2363.1m       2010年10月24日 

  

 中央アルプスを越える道が南部にもある。木曽から飯田へ抜ける街道大平(おおだいら)街道は、妻籠宿・大平(おおだいら)宿・飯田宿へと続いて古くから利用され栄えていた道である。しかし峠にある大平宿は過疎の為昭和4550戸を最後に全村廃村になったが、今は廃屋も建ち並ぶが「いろりの里」として甦り、宿泊も出来るキャンプ地になっている。この山の登山口はここから始まっている。

飯田から大平街道への入り口がわかり難かった。8号線にやっと入って行く。谷間の曲がりくねった狭い道が30Kmほど続き、飯田峠を越えてやっと大平宿に着く。さらに林道が10Kmほど奥に入って行く。名に聞こえた悪路、道路の中央には大きな亀裂、半分が砂で埋まって傾斜になっている道、石コロの転がるえぐれたミゾ、ガードレールの無い高い所、右に左に揺れながら、運転手さんお疲れ様。補修しても大雨ですぐに崩れてくるそうなので、雨降りでの入山は厳禁である。林道の終点に「摺古木山自然公園休憩舎」と言う小屋があり、中は比較的綺麗なのでここに宿泊する事にする。水場は無し。一台の車が帰る準備をしていた。今日はすでに15人程が下山して行ったそうである。

翌日5:30 夜明けと共に出発する。笹原の緩やかな道が登っている。ヤブを予想していたが、両サイドは綺麗に刈り取られ、手入れが行き届いていたので歩き易い。稜線が次第に明るくなり、紅葉の始まった山肌も順次明るくなって行く。赤や黄色が鮮やかに浮き上がり美しく輝いてくる。背後に恵那山が黒々と大きく浮かんで見える。

摺古木山へは自然園からの巻き道もあるが、直登への道を取る。笹の中の急坂を一汗かいて山頂に出る。1等三角点のある広場、南アルプスの大展望台であり、又御岳・乗鞍岳・北アなどが一望できる。すでに西の空には黒雲が垂れ込め、天気は崩れて来ているように見受けられる。

シラビソの樹林帯が続くシラビソ山への道は、小さなコブを幾つも登り降りを繰り返して進んで行くため疲れる。北風が強くなりミゾレが降っているかのように、シラビソの葉がパラパラと吹き付けて来て寒さを感じる。

シラビソ山は樹林の中であった。それを下って行くと避難小屋があった。立派な小屋であるが入り口の戸が開き難い。水場は近くには無かった。樹林に覆われた安平路山が正面に望まれ、後一息である事がわかる。その奥には南駒から木曽駒までの赤茶けた岩肌の稜線が続いているのが見受けられる。ここは中央アルプス最南端の山、全山縦走の時果たせなかった山である。

急な樹林帯を登り切った所が安平路山山頂であった。狭い山頂であり展望は良く無い。寒くもありすぐに下る事にする。避難小屋に戻り帰り着いた頃には、すでに山頂はもう濃いガスに包まれていた。山の天候は激変する。

下りの途中に自然園へ寄り道する。ハイマツと湿原地帯があったが、水は無く干上がっていた。黒々とした林の中に点々と赤い実が多数輝いている。群生しているアカミノイヌツゲの赤い実が寒々とした林の中で印象的であった。

小屋に帰り着き登山は終了する。本日の登山者は他に無しである。又車で悪路を下って行く。昨日は気づかなかったが、谷を隔てて山沿いの紅葉は見事であった。丁度見頃の時期、赤・黄・茶色、色んな色が夕陽に美しく輝いている。下り切った所で、何か道の真ん中で黒い動物がたたずんでこちらを伺っている。良く見ると大きな犬ほどの大きさのかわいらしい小熊であった。まもなく山肌に駆け上って行った。

大平宿で10食限定のキノコ蕎麦を食す。色んな種類のキノコが山盛り入っていて、真
っ黒なお汁であっ
たが美味しかった。あの小熊は度々出て来るそうで、人に危害を加えた事は一度も無いと語っていた。山奥の街道筋、雰囲気の良い気持ちの良い場所であった。やがて待っていたかのごとく、大粒の雨が降り出して来た。

 小屋(5:30)—安平路山(9:50)— 小屋(13:15)