<朝日連峰縦走

以東岳1771m 大朝日岳1870m 祝瓶山1417m

 

   2007年10月2日~4日        山行者 3人

  

【10月2日】

以東岳 

東北の奥深い山で、熊を追ってマタギが住んでいた山、岩魚と原生林に埋まり紅葉の綺麗な山、山岳宗教の無かった原始の山と聞いている。大阪からは遠い。夜行バスで山形に入り、前日は月山に登り、昨夜は大鳥川の奥深く泡滝ダムの路上に泊まった。国道から1時間もタクシーは走り、水の溜まった狭い長いトンネルを2つも潜り、両岸狭まった渓谷の暗闇に降ろされた。道路はここまで。悪路の暗闇で、帰りの車はさぞかし恐かろうと心配する。

朝、夜明けと共に出発する。支流の大鳥川沿いの幅広い歩道は明るくて傾斜も無く、爽やかな渓流を眺めながらで気持ちが良い。吊橋を2つ渡って行くと、七曲りと言う急な登りにかかる。ブナの大木が頭上を覆う。

急坂を1時間ほど汗を拭き拭き登った所には、満々と水を堪えた大きな大鳥池が樹林に囲まれて静かに横たわっていた。湖畔には大鳥小屋が建ち、真に桃源郷のような感じがする。明治時代に灌漑用に造られた池だそうで、大きな水門があった。「タキタロウ」と呼ばれるイワナの怪魚が住んでいると言う。

三角峰への登りはかなりの急坂でヨタヨタとしながら登って行く。樹林帯を抜け出すと展望が広がって来る。最初の目標の山、以東岳が稜線上の先に見える。大鳥池が山々に囲まれて小さく見下ろせる。遠く北に見える山は、鳥海山と月山であろう、雲の上から僅かに顔を出している。

以東岳では直ぐ下の以東小屋からの登山者や朝日岳からの縦走者達が数名通過して行く。背の低い草紅葉が赤く紅葉していた。この辺りが一番綺麗だと言う。天気が良くて少し冷え込んだ為であろう。NHKの取材陣が先に行ったと言う。

縦走路を南に向かって下って行くと、10数名のカメラマンがマイクを立てて紅葉を撮影しているのに出合う。「日本の名峰」として来年の放映で、大鳥小屋・以東小屋・狐穴小屋・大朝日小屋と泊まりを続けて行くそう。

狐穴小屋では我々と泊まりが一緒になった。小屋番はその為、食事の準備に登って来ている。小屋の前には水が引かれ、お陰で良く冷えたビールを購入する事ができた。広大な草原の中の一軒屋は他に登山者も無く静寂そのまま。床はピカピカに磨かれ、真新しい小屋のようで気持ちが良かった。外では満天に星が瞬き昼のように明るい。

 

【10月3日】

大朝日岳

夜が明けてから出発した為、日の出の御来光には間に合わなかった。撮影隊は暗い内から出て行ったそう。雲が広がっていて、良い御来光では無かったように思う。今日も天気は良い。

 竜門小屋も同じような構えで人が泊まっている気配はなかった。大朝日小屋直下の「金玉水」の名水は、山から直ぐに湧き出ている水で、非常に冷たくて美味しかった。水筒に満たす。

 大朝日の小屋には古寺鉱泉からの登山者達なのであろう、10数名の人達が休んでいた。大朝日岳の山頂は全く展望が良い。大きな展望台がある。これから向かう祝瓶岳が峰々の遥かかなたに望まれる。山頂からは急角度に下っている。

 

こちらの縦走路に入ると、道は格段と悪くなる。あまり歩く人もいないのであろうか、草に覆われている所もある。左側斜面の道が崩れ落ちて途切れている所もある。丁寧にも総てピークを乗り越えて行く。

大玉山の登りは垂直に近い急登で、疲れた足には息が切れる。山頂のピークは藪の中なのか分からなかった。孤高の山のように切り立った祝瓶山を正面に見ながら下りにかかる。潅木帯に入り足場の悪い下りを1時間も続け、「赤鼻」の水場の大きな標柱を見つけた時にはホッとした。本日の行程はここまでであるが、水場が見つかるかどうか心配していた。

水場は下り10分、登り20分もかかる足場の悪い所であった。秋で水脈が下がっているのであろう。草付きの標識の傍にテントを張る。樹林に囲まれた林の中、真っ青に色着いて輝いているサワフタギの実が多数見られた。

 

【10月4日】

祝瓶山

尾根を少し下ってから祝瓶山の登りにかかる。草付きの急な登り、今回最後の登りに感慨を深くする。振り返れば遥か彼方に大朝日岳が小さく望まれる。尾根の肩に荷物を置いてから山頂に向かう。狭い山頂かと思っていたが意外と広い。大朝日岳の方が狭かった。縦走最後の山にゆっくりと時を過ごす。

 針生(はんなり)(だいら)への下りの道は急ではあるが広くて良い道が付いている。何回も休憩を繰り返しながらゆっくりと下って行く。大きなブナやナラの大木が柔らかな朝日に輝き美しい景観となっている。まだ青々として葉を一杯に付けている。一人の登山者が登って来た。

 針生平には数台の車が停まっていた。キノコ狩りの人達、マイタケが目標のようである。籠を腰に付けて登って行く人に出合う。帰って行く乗用車に便乗させて貰い、五味沢村の温泉リフレ迄送って貰う。途中にあるマタギの村徳網は開けた明るい場所にあり、民宿となっていた。

昼間の明るい日差しの中、閑散とした広い温泉の中に一人沈んで行く。のんびりとして楽しい山行であった。山友と酒と美味しい食事、楽しかった。夜の夜行バスまでは暫く時間がある。又飲める。

 

 

10/2 泡滝ダム(5:20)—大鳥小屋(8:40)-以東岳(13:00)-狐穴小屋(15:20)

10/3 (5:30)-大朝日岳(11:20)-赤鼻水場(15:30)

10/4 (6:00)—祝瓶山(8:109:00)—針生平(11:20)=五味沢(12:30)