300名山紀行    天狗岳・ 御座山・諏訪山     

                                             山行者 3人

天狗岳 2645.8m 2010年11月26日

 八ケ岳連峰は総てすでに真っ白に雪化粧をしていた。この山は北八ケ岳では最高峰の山で、冬山の雰囲気が容易に感じられる入山のし易い山である。唐沢鉱泉から出発し、右回りに周遊のコースを取る事にする。ピッケル・アイゼン持っての冬山装備で向かう。

 唐沢鉱泉のヒュッテには泊まり客なのであろう、車が10数台停まっていた。ヒュッテの前から橋を渡り登山道に入る。背の低いシラビソの林の中に道が上がっている。凍り付いた石コロがゴロゴロしている歩き難い道である。本日は雲一つ無い快晴、相当に冷え込んだのであろうテカテカの氷が張り付いている。やがて道は白い雪に覆われるようになり、アイゼンをつける。尾根に上がり込んでからもシラビソの林が続き、道も幾分広くなり歩き易くなる。

 展望台に上がり着くと積雪は膝くらいになるが、固い雪であり苦にならない。アイゼンの無い2人連れがここから引き返して下っている。青い空に向かって白く屹立している赤岳・阿弥陀岳・硫黄岳などの南八ケ岳の主峰が目の前に広がっているビューポイントであり眺めが良い。蓼科山はお椀を伏せたような黒々とした山で良く目立つ。目指す西天狗岳・東天狗岳はもうすぐ目前であり山頂は近い。

 西天狗岳への登りは、大小の大石が総て雪に埋まっている急斜面の登りで、ルートが全く分からなくなっている。道を外すと雪の落とし穴に落ち込んでしまう。先行者が二人あり、そのトレースを忠実に拾いながら這い登って行く。

登り着いた所が三角点のある西天狗岳山頂で、北八ケ岳の最高峰の山である。広々とした雪原になっていて、2人の登山者が休んでいた。天気が良く360度の展望が広がっている。風が冷たく手がかじかんで来る。ユックリも出来ずすぐ目の前の東天狗岳へ向かう。

西天狗からの下りは豊富に積雪がある急坂で冬山の感じが良く出ている。少し低い東天狗岳山頂は狭い所であった。天狗の奥庭と呼ばれる黒々とした樹林帯が目の下に広々と広がっている。黒百合ヒュッテは、その中に見えるはずであるが良く分からなかかった。

樹林の中を下って行き,峠らしい感じがしない樹林の中の「中山峠」を越えて行くと木道の沼地があり黒百合ヒュッテに着く。沢山の薪を積み上げている広い大きな小屋は年中営業している小屋であるが,今は人影も無くヒッソリとしていた。

さらに下りの道は沢沿いの道、大石が総て凍り付いていて歩き難い。アイゼンをガリガリ云わせながら下って行くが、金網が渡してある小橋はさらに歩き難い。樹林帯がカラマツ林になり、雪が無くなりアイゼンを外せる事が出来てホッとする。林の中は歩き易い。

唐沢鉱泉に帰り着いた時にはもう薄暗くなりかけていて、ゾクゾクとする寒さが忍んでいた。車を川沿いまで移動して橋の傍にテントを張る。真っ暗になった18:00頃、ライトを照らしながら2人連れが下って来ている。地元の人達のよう。

翌朝は猛烈に冷え込んだ。テントのポールが凍っている。−4度である。無理も無い、ここは標高1860m地点でちょっとした山の頂の高さの所である。

 

唐沢鉱泉(10:00)−西天狗岳(13:20)−黒百合ヒュッテ(15:00)−唐沢鉱泉(16:40)

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 御座山(おぐらやま) 2112m     2010年11月27日

 

 神が鎮座する場所があると言う山で、頂上の大きな岩峰が聖地(盤座)として崇められている。八ケ岳からはすぐ隣の山であるが、麦草峠が閉鎖されている為大きく大回りをしてから登山口に向かう。東西に長い山稜で登山口は3箇所あるが、今回は一番端にある長者の森からのコースを取る。

 長者の森はキャンプ場もある大きな公園になっていて、公園の奥からカラマツ林の遊歩道が整備されている。広々とした歩き易い道が緩やかに上がっている。初冬の陽だまりの中の道、深々としたカラマツの落ち葉を踏みながらノンビリと登って行く。周りは総てカラマツ林で、赤っぽくなった立ち木が青い空に向かって立ち並んでなっている。その中に赤と白に塗られた鉄塔が一際大きく目立つ。それに向かって登って行き、鉄塔に上がり込むと稜線に出て来る。

 尾根道はカエデやミズナラ・シラカバなどの落葉樹が続く狭い痩せ尾根がしばらく登っている。白岩登山口から登って来た登山者に出合う。見晴らし台では北面だけが見え、頭だけ白く雪を冠っている浅間山が近くに望まれた。

 前衛峰1992mに出ると、正面には樹林に覆われ黒々としている御座山がどっしりと鎮座しているのが見られる。そこから一旦コルに下り、山頂への急坂の登りにかかる。ツガ・トウヒなどの鬱蒼とした樹林の中の薄暗い道をひとしきり汗をかきながら登って行く。やがて傾斜が緩くなると避難小屋に着く。トタン葺きで貧相なようであるが、中は板張りの床で宿泊も出来そうな立派なものである。水場は無い。

小屋のすぐ背後が山頂であった。薄暗い樹林を出ると突如として岩壁が現れ、岩頭が青い空中にはみ出している凄みのある岩陵に出合う。岩陵は細長く南北に伸び、その北の端に御座山の標識があった。三角点は無く、目の下は凄まじく切れ落ちている狭い山頂である。ここが神の座る場所なのであろう。風もあり寒くてユックリも出来ない。小屋に戻り中でしばらく休憩する。幾人もの登山者達が登って来ていた。

 帰りは同じ道を下って行く。長者の森からの登山者は殆どいなくて、大概が山口登山口からのようであった。樹林の美しい山であった。

 

長者の森(8:20)−御座山(11:40~11:55)−長者の森(13:45)

 

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諏訪山 1549.4m    2010年11月28日

 

 御座山から峠を越えれば諏訪山のある上野村までは直ぐであるが、ぶどう峠が閉鎖されている情報を得ていた。しかし通行止めの標識も見えないため恐る恐る突っ込んで見ると、何の障害も無く通過出来、早く上野村に着く事が出来た。迂回すれば3時間はかかったであろう所が30分で済んだ。西上州最奥の村で四方を山に囲まれ、冬には峠越えが出来なくて入村が難しい。しかし25年前の日航機事故以来、村は大きく変貌している。神流川(かんながわ)源流には大きなダムが完成し、御巣鷹山へ通じる道路は立派なものが造られ、下仁多からは大きなトンネルが出来て峠越えをしなくても冬でも通行できるようになっている。「浜平温泉しおじの湯」が新たに開業され賑わうようになっている。今も温泉には多数の車がやって来ている。浜平(はまだいら)のトンネル近く、草付きのキャンプ地のような所が諏訪山登山口の標識のある大きな駐車場であった。登山者のような車が2台停まっている。今日はここにテントを張る。水は近くの民家に貰いに行った。

 朝まだ暗い内の6時に出発する。最初は「湯の沢」を詰めて行く道である。昔は温泉が流れていたのであろうか、白い湯の垢がこびりついている。沢沿いには太く長いパイプが引かれ、上流には壊れたタンクが放置されていた。この沢の入り口には平成9年まで浜平鉱泉があったが今は廃業されたそうである。流れている水は冷たかった。源泉はどの辺りなのであろうかと思う。

 小さな沢で右に左にと渡り返しながら登って行く。堰堤がありハシゴや木橋もあり良く整備されているが、洪水でもあれば荒れる事であろう狭い小さな沢である。1時間ほどで流れが無くなり源流近くを九十九折に急坂を登るようになる。カエデ・ミズナラなどの落葉樹の樹林帯で、総ての登山道が落ち葉に隠され、道が見分けられないほどうず高く埋まっている。サクサクと落ち葉を掻き分けながら登って行く。

 登り着いた所が湯の沢の頭で稜線に出る。天気は快晴であるが、ゴーゴーと北風が強い。冬型の冷たい風が落ち葉を巻き上げながら絶えず吹き付けて来ている。寒い、ヤッケを着る。稜線も落葉樹の多い樹林帯の中の道、ピークを巻きながらのなだらかな快適な道である。北風が益々強い。しかし反対側に回ると無風でのんびりとした雰囲気になる。

 1時間程で壊れた避難小屋に着く。屋根とトタンの側壁だけの粗末なものであるが風が強いため中で休む事が出来てありがたかった。昔はお籠り堂であったとの事。暫く休む。

 この小屋からが難所の悪場でこの山の核心部である。狭い痩せ尾根になり、二段の長いアルミのハシゴを登り、足場の少ない痩せた岩陵を横切り、垂直な大岩壁の下を辺つり、その岩壁の裏側を這い登ると岩峰の山頂に出る。突出した狭い山頂には大きなお堂が鎮座している。眺めが良く360度の展望、上州の山々が望まれる。最初はこれが諏訪山山頂かと思ったが、ここは三笠山刀利天王の奥社で三笠山と呼ばれている。諏訪山はその奥にまだ黒々とした樹林の山陵が幾つものピークを連ねている、その内の一つが山頂なのであろうが特定できなかった。

急な斜面の岩場をロープで下り、広々とした樹林の中に入って行く。登り下りを幾度か繰り返し、幾つ目かのピークを登り切った所が山頂であった。樹林に囲まれた広々とした台地の真ん中に三角点があった。尾根の一部のような感じで山頂らしくない所である。信者達は三笠山で終わり、ここまでは来ないのであろうと思われる。

 帰りは同じ道を下って行く。風は止んでいた。落ち葉の中の気持の良い道を軽やかに下って行く。2時間と少しで帰り着く。しおじの湯で温泉にくつろぎ、名物のイノブタ料理を食す。コンニャク・味噌・ネギが名産のようでミヤゲとする。下仁多に通じるトンネルは平成16年に出来たそうで、古いナビには載っていなかった。沢あり樹林帯あり岩場あり、変化に富んだ面白い山であった。

 

浜平(6:10)−諏訪山(9:50~10:10)−浜平(12:35)

 

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