300名山紀行   

両神山 1723.0m) 

 2009年11月16日         山行者 3

 

 埼玉県は西の端、秩父の奥地にそびえる山で、山頂は岩峰で尖り、周りは深く谷底に落ち込んでいて鋸の歯のような峰が続いていると言う。イザナギとイザナミの両神様を祀っていると言われる両神神社が山中にある。日本武尊が八日の間この山を見ながら旅を続けたので「八日見山」とも呼ばれているそうで、信仰の山となっている。

 登山口のある日向大谷の村は、民宿が数軒あるのみの鄙びた山村で、狭い斜面に小さな駐車場が3箇所ある。一番下が一番大きかったので、ここにテントを張る事にする。16時のバスでは登山者が4〜5人下って行ったが、18時の最終バスには誰も乗って居なかった。ここへは大型バスも入れない狭い車道が入っている。別ルートのある白井差からの登山道は所有者とのトラブルからか、現在は登山禁止となっていてこちらへは下れない模様。

 明るくなってから出発する。民宿の飼い犬であろう、茶と白の2匹の柴犬が途中まで道案内をしてくれる。柿の実る畑の間を縫ってから山道に入り、深い谷を見下ろしながら山肌を巻き気味に辿り、沢の合流点に到着する。右の谷は七滝沢で、こちらは下りに取る事にして左の沢に入る。

 明るい開けた沢、落葉樹ばかりの樹木は総て葉を落とし、僅かに残っているモミジの赤い葉が照り輝いている。谷は総て枯れ落ち葉に埋まり、その間を縫って白い渋きとなって清流がはるか高い位置から一直線に流れ落ちている。花崗岩の沢は気持ちの良い谷である。弘法の水から谷を離れ尾根に向かう。少し登ると清滝小屋であった。斜面に建てられた立派な大きな小屋で、シーズン外でも利用できる模様。ここまで2時間ほど。

 尾根に出てからは岩場が続く。鎖場のある急坂を登って行くと、やがて両神神社奥宮の鳥居が見えて来て稜線に出る。ひんやりとした空気は冷え冷えとしている。二匹の狛犬が出迎えてくれた。ここでは尻尾の長いニホンオオカミであった。昨日登った武甲山もそうであったが、秩父地方の神社では多いそう。

 稜線は両側の切れ落ちたヤセ岩陵の道、僅かに辿ると突き出た岩石の上が頂上であった。3人の若者に狭い山頂は独占されている。八丁峠からの岩陵を来たそう。360度の眺め、広々とした大地はグルリと山に囲まれている。はるか彼方に真っ白な富士が見られる。北の奥に白く連なる山並は北アルプスあろう。霞んでいて良くは見えないが筑波山の辺りであろう、相当の遠方まで見渡せた。

 下山は七滝沢コースを取る。両神神社から一気に谷に下って行く。山頂まで切り立っている岩陵の間から、白く光る一筋の清流が谷底まで一気に流れ落ちている。幾段にも岩に打ち当りながら流れを大きくしている。これが七滝なのであろう、それぞれ滝の名前が標示されている。紅葉は終わり枯れ枝ばかりの谷ではあったが、見事な光景である。

 滝が終わるとサラサラとせせらぎの音を聞きながら、うず高く積もった落ち葉をカラカラと踏み分けながら、やがて真っ赤に色づいたカエデを愛でながら、気持ちの良い沢沿いの道を下って行く。

 沢筋を2時間ほどで、駐車場に帰り着く。車は3台ほど増えていた。気持ちの良い山であった。もう少し早い時期の紅葉は素晴らしい事であろうと思う。

 

日向大谷(6:10)−両神山(10:0)−七滝沢(11:00)−日向大谷(13:00