< 甲斐駒ヶ岳2967m 鋸岳2685m >
2002年10月12日〜14日 山行者 5人
【10月12日】 晴
戸台(7:00)−角兵衛沢出合(9:30)−大岩下(12:30) |
調べて見ると16年前と11年前とに2回登っていた。快適に登れた山であったが、崩壊の激しい山であるため過去の記録はあてにならない。新しい記録を求めてインターネットで情報を集めて見ると、ルートは以前と変わっていないようであった。昔は一日中人に会うこともなかったが最近は入山者も多いようで、コースもしっかりしているように思われた。
戸台川の入り口、戸台山荘には深夜の1時頃到着した。無人なのであろうか明かりも無くひっそりとしている。山荘前の広場にテントを張った。朝方びっしょりの夜露に覆われ少し冷え込んだ。予報ではこの連休3日間、大きな高気圧に覆われ天気の崩れる心配がないので安心である。
少し先の河原の駐車場には車が3台ほど止まっていた。ここからのコースはただ一つ、皆鋸岳を目指しているのであろうか。河原の中の道は絶えず水に流されるためいつも不明瞭である。樹林の中にある道は昔のまま、懐かしい角兵衛沢の出合にある大きな地図の書かれている看板は忘れられたかのように草むらに崩れ倒れていた。いつもここで鋸岳を仰ぎ見、感動したものである。新しく出来た川沿いの道には別に立派な標識が付けられていた。
ここから川の流れの中を渡るが、水量も少なかったようであったがいつものように靴を脱いで渡った。樹林の中の急登は昔のまま、ジグザグに登って行く。暑いさなかで苦しい登りになると思われたが樹林の中はひんやりとして汗もそれほどかかず快適に登って行けた。
目標の大岩下のテント場には昼過ぎに到着した。すでに、一人と三人のパーティがほんの少し前に到着したのであろうかテントを張り終えた所であった。ここから上には水場も平地も無い為、皆ここに宿泊することになる。我々の5人用のテントを張ればもう余地は無いほどの狭い棚場である。冷たい水が岩の間から絶え間なく滴り落ちている。絶壁の中の眺めの良い場所、しばらくのんびりと昼寝を楽しむ。
【10月13日】 晴
(6:00)−鋸岳第一高点(8:25)−第二高点(11:45)−中川乗越(12:50) −六号石室(15:15) |
朝早くから、3つのパーティが一斉に出発した。ズルズルと崩れ落ちて来る急斜面のガレキの中を、足場を固めながら落石に注意しながら慎重に登って行く。
鋸岳第一高点まで、一気に登り切る。ここで単独行の人は引き返して行った。切り立った狭い山頂で、眺めは良いがゆっくりと座る場所が無い。釜無川からの3人のパーティがすぐさま登って来た。さらに7人のパーティが快調な足取りでこちらに向かっているのが眺められる。押し出される形で、休む間も無く我々がトップで小ギャップに向かう事になった。
小ギャップは以前に較べて大きく崩壊していて、手足の手がかりも大きく登り易くなっていた。ロープも垂れ下がっていたが、10mほどを懸垂で降りる。次の鹿ノ窓への登りは大きく崩れていて足場が悪い。ロープが張られている。
難所の鹿ノ窓からの下り。岩溝には一抱えもある様な大きな岩が不安定に乗っていて、触れるだけでガラガラと崩れて行く。下のガレキまでびっしりと詰まっていて危なくて近寄れない。しばらく足で蹴落としながら掃除をしながらザイルで降りて見る。垂れ下がっているロープは途中までで下まで届かず、40mザイルでもガレ場まで届かず中途半端であった。
下ってから直ぐに取り付くトラバース道は以前のルートのままであったが、7人のパーティはそこからさらに下って行って大ギャップから延びているガレの底を渡って行った。先頭には専門のガイドが付いているようで、全員がザイルで繋がれ規則正しく快調に登って行った。我々は以前からあるトラバース道を進んで行くと、2ヶ所ほどルートが崩れ落ちていて狭くなっている。反対側から下って来た単独行者がそこで立ち往生していた。我々はザイルを出して順番にソロリと渡った。ついでにその人も渡らせてあげる。
鉄剣のある第二高点に上がりこんだ所で悪場は終わった。3時間もの長い苦闘の連続であったが、緊張と楽しみとで程よい疲れを感じた。通過して来たルートを眺めながらしばらく休憩をとる。いつの間にか我々が一番最後になっていた。
今日は六合目石室までの為、時間的にもゆっくりとできる。幾度も幾度も鋸岳を振り返り眺めながらゆっくりとテント地に向かう。
テント場は正面に甲斐駒ヶ岳を見据えての眺めの良い場所であった。テントは全部で3張り。水汲みに往復30分もかかったが、鋸岳を登り終えた満足感と悪場を通過してきた安堵感とで気持ちの良い休息の場所であった。薄明かりの空が真っ黒になり、かすかに見えていた一番星から次第に増えて行く星の数を数えながら、やがて数え切れなくなって行く満天の星を眺めながら過ぎて行く刻をゆっくりと過ごした。
【10月14日】 晴
(5:30)−駒ヶ岳(7:25)−北沢峠(11:00) |
予報通り今日も快晴である。南アルプスの巨峰甲斐駒ヶ岳に向かう。さわやかな朝の空気の中を快調に登って行く。昨日の鋸岳が少しずつ低くなって行くのが眺められるが、特異な山のため一際際立って見え懐かしい。朝日が当たり真っ赤に輝いている。
山頂まで来ると急に賑やかになり、多くの人達の喧騒の場になっていた。まだ続々と登って来ている人気の山である。
双児山を経由して北沢峠に下ってくる。バスは臨時便が幾つも出ていた。紅葉には少し早いようであるが、黄色をベースとした山肌は雄大な景観を広げていた。バスの中から眺められる鋸岳は谷底から鋭く立ち上がり荒々しい様相を見せていた。あの山のてっぺんから下りてきたことを思えばよくも登れるコースがあるものかと感心する。昨日通過した「鹿ノ窓」が、針の点ほどの大きさながらも白く光ってはっきりと見えた。
高遠の温泉で一浴してから帰路に向かう。