< 笈 ケ 岳 >

 

笈ガ岳1841m三方岩岳1736m大笠山1822m大門山1572m

 

2003年4月26日〜29日       山行者 5

 

4月26日 晴

 

富田(6:30)−馬狩(11:00)−三方岩岳(16:00)

 

日本200名山の中で最も困難な山とされているが最近の人気の山である。5月の残雪のあるこの時期にしか登れないため、集中している。今回我々は南から北に縦走する5日間の計画である。

 白山スーパー林道の馬狩のゲート前に車を置く。先月の猿ケ馬場山で世話になった同じおまわりさんが又もや見回りに来ていて、都合よく登山届を提出する事が出来た。連休が始まったばかりで、釣り師の車以外は全く無くまだ誰も登山に出発しているようには見受けられなかった。昨日までの大雨が止み天気は快方に向かっていて、これから4日間の快晴が予約されているようで、心配の種の一つが解消され今回の山行はほぼ成功したのも同じであった。

 登山口の道標が見つからずダムの突き当たりまで行って、少し引き返してから登りにかかる。夏道は立派なものがあったように記憶していたが、雪で崩れほとんど消えかかっている道を拾いながら急な勾配を登って行く。転げ落ちそうな足場の悪い登りに一汗掻く。頭上に林道のコンクリート壁が見え出した所で残雪が出て来たため、アイゼンを着ける。

 今年は雪が多い。降雪量は平年並みだそうであるが、春先から溶け出さずにそのまま残っているため、積雪量は非常に多い。以前同じ時期に来た時には三方岩岳山頂まで雪が無かった事もあった。蓮如台から上は豊富な積雪、その雪の上に朝早く登ったであろうトレースが着いていた。3〜4人くらいか。

 トレース伝いに高度を上げて行くと、今までガスに隠れて見えなかった三方岩岳の黒々とした岩峰が風に吹かれ切れ切れに見えて来る。高台に上がり込んだ所で、その全貌が現われたが、山頂への登りにかかる頃には又もや深いガスに包まれて来た。はっきりとしたトレースをたよりに岩岳への登りにかかる。斜度45度の雪の壁をトラバースして潅木帯に入ってからも見通しは悪い。何故か先行のトレースは大きく下っていた。我々は上に向かい稜線に出てから下って行く。

 所々現われる夏道を拾いながら下って行ってから少し登った所でテント場を探す。濃いガスの為現在地が確定できず、見晴らしの良さそうな高台を見つけテントを張る。

19:00 遅めの食事を済ませ、早々と寝に付く。今夜はボリュームたっぷりのハリハリ鍋であった。このまま晴れなければ停滞するしかなさそう。

 

【4月27日】 快晴

(6:00)−三方岩岳(6:50)−仙人窟岳(11:30)−笈ケ岳(13:40)−錫杖岳(14:30)

 

朝の5時、変わらず昨日と同じ濃いガスの中。6時、雲の動きが速くなり次第に明るくなってくる。やっとガスが晴れ見晴らしが良くなって来た。地図と照らし合わせた所で「アッ」と驚く。正面に大きな白山が現われている。目指す笈ケ岳が見えない。何と我々は反対方向の南に進んでいた。どこで間違えたのであろうか。ひとまず昨日のトレース跡を引き返す事にする。何と同じように間違えて一人の登山者が笈ケ岳目指してこちらの方にやって来るではないか。

 30分ほどで引き返して行くと三方岩岳山頂では4人の登山者が手を振っていた。このすぐ下で泊まった様子。昨日は先行のトレース通りについて行けば間違えなかった事と思った。

4人のパーティは61歳から70歳までの男性ばかり、平均年齢65歳とかで我々よりも上。憧れの笈ケ岳を目指し大笠山から桂湖に下りるそうで、20Kgもの荷を担ぎ皆元気。足が速くこれから先、常に先行して頂いて多いに助かった。これから向かう笈ケ岳と大笠山がはるかかなたに見える。雪が深く真っ白である。天気は快晴、快適な雪山の縦走が楽しめそうである。

 4人パーティの後ろを追う。4人はアイゼンなしでドンドンと早い。1646mピークの手前で休憩し、ヤブのむき出ている仙人窟岳の登りを眺めていると、突然その手前に人が現われたのにはビックリとした。この山はカモウリ山からのコースしかないものと思っていたが、1646mピークに直接登れる新コースがあるらしい。先行者がもう一パーティ出来たため、もう一安心である。

 仙人窟岳への登りのヤブは長くて苦しい登り。登り切った山頂は広々とした雪原でゆっくりと休憩を取る。もう笈ケ岳は目の前で、この稜線を下り切った所に難所の岩場がある。

 岩場は石川県側を巻くように道があり、ロープがついている。雪が着いてないため難なく登れた。下って来た人はザイルで降りていた。岩場を直接登るルートも以前にはあったように思うが、今は大きな雪渓に埋まっていた。

 カモウリ山からの合流点には幾人もの登山者が通過していた。山頂からもまだ何人もの人達が下って来ていて、人気の山である事が伺える。そこで休んでいる人は京都の人達、日帰りで山頂を往復して今日中に京都に帰るそうであわただしそう。我々は5日間もかけて登りに来ている。山はゆっくりと楽しみたいものである。

 笈ケ岳山頂目指して最後の登りにかかる。山頂まではべっとりと雪が付いていて、ユックリと一歩一歩かみ締めながら登って行く。山頂は狭くて雪はない。人もいない静かな山頂である。ノートの入った壷があるのも以前の通りで6年振りの山である。

 大笠山目指して下山にかかる。石川側にヤブを漕いで雪原に出てから急な雪渓を下って行く。下ってから一登りした所が錫杖岳の頭であった。目の前に笈ケ岳を眺めての展望の良い所、今日は少し早いがここにテントを張る事にする。

今日は暑くて水筒の水が皆底を突いていた。雪を溶かし冷たい水を何倍も飲み干す。思わず皆「ウマイ」と叫ぶ。しばらく回りの山々を眺めながら休憩する。籾糠山は小さいが形の良さからかどこからでもすぐ分かる。近くに人形山が大きい。4人のパーティも遅れて到着。ここを降りた所に泊まると言って下って行った。

 

【4月28日】 快晴

(5:25)−大笠山(8:30)−奈良岳(11:00)−大門山分岐(15:00)−大門山往復(16:00)

 

朝一番の出発は錫杖岳からの急な雪渓の下りから始まった。昨日のキックステップの跡はカチカチに氷ついていて慎重に下って行く。下ってからササのヤブを漕いで登り切った所が宝剣岳の頭であった。ここも眺めの良い所でテント場としても良好である。大笠山が大きく立ちはだかって見え、もう近い。

広々とした大笠山への登りの稜線には豊富に雪が付いているが、あちこちに亀裂が出来ていて割れていて、その都度ヤブの中を回り道しながら次第に高度を上げて行く。こちら方面から眺められる笈ケ岳は格好が良く堂々としている。朝日に輝き神々しさを感じる。

大笠山に到着した所で今回の山行の悪場を無事通過出来た事にホッとする。バンザイバンザイ。4人のパーティはバテたようで未だ到着しない。ここから大門山までは難所もなく、のんびりユックリと楽しめるルートである。

大笠山の下りには夏道が出ていた。2人のパーティが登って来ている。ブナオ峠から三方岩岳まで行くそうで、西赤尾から車道を歩いたとの事。雪崩の跡のトラバースが険しかったと言う。さらに3人のパーティに出会う。親子のよう。

奈良岳は一面雪の山であった。今日も暑い。皆水筒の水が無くなっていた。コンロを出して水を作り、水筒を満たす。

切り立った見越山は登りも下りも雪は無かった。ここでアイゼンを外す。大門山の黒々とした山塊が迫って来る。赤摩木古山は方位盤が雪の間から覗いていた。大門山への分岐点に来て、飛騨から加賀へ抜ける峠の道が見下ろせるようになる。今日はここにテントを張ることにした。

テントを張ってから大門山を往復する。3月に登りに来た時にはその姿すら望めなかったその山の頂きに立つ事が出来て満足であった。だだ広い雪原の山頂には標識も何もなかったが、雪深いはるか遠くの山に来た感じがする。黒々とした猿ケ山が北の方向に眺められ、雪深いブナオ峠が足下に見える。今回の山行はここまでとしよう。猿ケ山は次回の楽しみにと思う。

 

【4月29日】 快晴

 

(5:40)−ブナオ峠(6:30)1103m(7:15)−車道(9:30)−西赤尾(10:30)

 

通過出来る日の方が少ないと言われるブナオ峠はまだ深い雪の中であった。ブナの木が多い。ブナ一色のブナだけの山である。まだ葉が無くて赤い。

 1103mに上がりこんでから西赤尾に向かう。3月に来た時のテント場の跡を探しながら下って行くと、1000m地点にその目印のテープがあった。もう手の届かない4~5mも上の木の枝に着いていた。相当急な高台と思っていたが幾分なだらかな場所であった。雪が積もれば山の様相は想像できない程の厳しい山に変貌するのである。

下って行くに連れて雪が無くなって来ると、相当のヤブの中であった。テープが無ければコースを見失うようである。ブナの青葉が水々しい。白のタムシバがずらりと連なり、黄色い小さなマンサクが輝き、ツバキの赤色が彩りを添え、足元にはかわいいイワカガミの群落が続いている。白い山から賑やかな山に変わりつつあった。

西赤尾のガソリンスタンドに帰り着いて今回の山行は完了する。前回軒を借りて身支度をした所である。ここに無理を言って車を取りに行くために回送を頼んで見る。馬狩まで西川さんが車を取りに行く1時間ほどをのんびりと休んでいると、その国道を北に向かって走って行く幾人もの人達がいる。名古屋から金沢まで走るウルトラマラソンの人達である。マラソンも登山も他人から見れば過酷なスポーツのように見られるが、本人達はすごく楽しんでいるのである。

天候に恵まれ雪山の素晴らしい面が充分楽しめる事が出来た山行に満足する。それから国民宿舎の温泉に入り、拾遍舎で名物の固トーフとソバを食べ、固トーフをみやげに北陸道を通って帰路に着いた。