< 人 形 山 1726m >

 

  2003年6月7日         山行者  5人       

高槻(5:30)―人形山登山口(11:00)―人形山山頂(14:30)―登山口(17:00)

 

手をつないだ姉妹の雪形が現われると言う古くから伝説のある山であるが、今回は時期が遅くて見る事ができなかった。五箇山の菅沼合掌造り集落の前に聳え立つ大きな山で、その麓にある国民宿舎五箇山荘にその云われが詳しく書かれていたのを前回来た時に見てから一度は登って見たいと思っていた。

 朝早く大阪を立ち、車を五箇山荘目指して走らせる。山荘までは順調であったが、登山口からは地道の登りで、ホコリを舞い上げながら車は登って行った。途中土砂崩れの工事中があり柵を上げて貰い通らせてもらった。その先で一寸した車のトラブルがあったが、中根平山荘前には11:00頃何とか到着する事が出来た。車の駐車場はもう少し上の方のようであったが、さらに道は悪くなるようなのでここの広場に車を置く事にした。車道を10分ほど歩いて登った所にさらに大きな駐車場があり、車が20数台も駐車していてかなりの人達が登山されている様子であった。アズマヤがあり、立派な登山口の道標があった。

 いよいよここから登山開始である。しばらくは杉の植林地の登りが続いているが、次第にブナの林に変わって行く。ひたすら一直線の登りの道で、かなりの急な登りが続いている。コースは真っ直ぐなので分かり易い。曇り空ながらも蒸し暑く、かなりの汗が出る。既にもう幾人かの人達が下って来るのに出合う。

 1218m第一休憩所は開けた広場にあり、樹林の間から大きく人形山が眺められた。切れ込んだ谷筋には白く残雪が光っているが、雪の無い地肌の方が多くて娘の形には見え無かった。時期が遅いのであろうか。

 宮屋敷跡には木造りの鳥居が立っていた。開けていて展望は良い。谷には幾筋もの雪が残っている。吹き上げる風に心地良さを感じていたが、その内冷たさを感じるようになり早々に出発する。

少し下ってから高原状の尾根道を行くようになる。吹き上げる風が冷たい。大きな雪渓が幾つも残っていた。太い大きなダケカンバが登山道に寝そべっている。ミツバオーレン・イワカガミ・カタクリ・などなどの花が幾つも見られるようになる。ここでも何人もの人達が下って来るのに出合う。

 山頂に続く稜線に上がり込んだのは14:00頃で、予定よりはかなり遅くなり最高峰三ガ辻山へ登るのは無理であった。標高は少し低くなるが、人形山山頂までは行く事にする。どんよりとしていた空が俄かに黒雲に覆われ、稲光と雷が鳴り出して来た。ミゾレ交じりの冷たい雨が降り出してくる。急いで雨具を着ける。そこから人形山山頂までは、30分ほどであった。

 山頂には三角点はなく大きな標識があった。広々とした台地状の山で、見晴らしは良い。誰もいない寒々とした山、まだ雨は降り続いている。ゆっくりとする事もなく、すぐさま下山にかかる。

 登って来た道と同じコースを下って行く。ゴロゴロと近くでまだ雷は鳴っているが、樹林帯に入ってからはひとまず安心である。この山には色々と山菜か多く、ワラビを摘みながらユックリと下って行く。降り切った所の広い駐車場は既にガランとしていて、車は2台のみであった。往復6H程の山旅は、気構えるほどの山でもなく登山者も多くて楽しい山であった。

 車を回して明日の山猿ケ山の登山口に向かう。

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< 猿 ケ 山 1448m >

 

2003年6月8日

                

小瀬(5:30)―池の平(6:40)―袴腰山(7:50)―猿ケ山(12:00)―小瀬(15:20)

 

池の平キャンプ場まで車は入れるものと思っていたが、工事中との事で小瀬の集落からは通行止めになっていた。そこには合掌造りの家が2軒あり、様子を聞こうと玄関に近づいて見ると大きな音で警報が鳴り出して来た。防犯装置が付けられている様子。一軒は資料館になっているようで管理人らしい人が間もなく出て来た。家の前の大きなプールからは湯気が舞い上がっている。ここは地元の温泉への源泉になるそうだとの事。車を少し下げて、ヘアピンカーブが川渡っている橋の上に今夜はテントを張る事にする。まだ雨は降り続いていた。

 袴腰山から猿ケ山まで縦走して同じ所に下って来る周遊コースには花が多いとの事で、近畿地方とは違った植生が見られるものと期待していた。通行止めにより車道を往復2時間ほど歩く事になり少し計画が狂った事になる。

 朝起きて見ると雨は止んでいて、すっきりとした晴れた空になっていた。車道を1時間ほど歩いてキャンプ場に向かう。どこも工事などしている様子も無く立派な道路が続いていた。反対側の峰越の登山口から歩いて登って来ている登山者に出合う。地下足袋姿の夫婦連れ、どうやら山菜取りの格好である。

 袴腰山登山口の標識を見て登山道に入る。最初は草が生い茂り幾分不明瞭な道であったが、裾を巻くように緩やかに登って行くと尾根への登り口にたどり着く。ここから道は良くなり、階段状の広い道は少しずつ傾斜がきつくなって来る。早速お目当てのユキツバキの葉っぱが両サイドに現われて来たが、肝心の花が見つからない。しかし登るに連れやがて数輪ずつ現われてくるようになる。朝日に輝き黒っぽい葉が白く光り、赤いかわいい花があちこちから顔を覗かして来る。密集している青い葉っぱの影から点々と赤い花が続いて行く。ツボミは見当たらずもう満開に近く、ほとんどの花は落ちて無くなっている様子で見ごろの時期には少し遅かったような感じである。以後下山するまで随所にこの花は見受けられ、ツバキの山であることがうかがえた。

 袴腰山の山頂は最高峰の印しが有るだけで三角点も広場も無く、ずんぐりとした台状の山頂であった。そこから少し進むと鉄骨の長いハシゴのかかっている展望台に出て来る。登って見るとここからの展望は良い。金沢が見下ろされる。

 いよいよここから縦走にかかる。目指す猿ケ山は谷を隔てて大きく望まれている。突然登山道横の密集しているササヤブの中でガサゴソと動物の歩く音がして来る。さては熊か、と大声を上げて見ると中から返事が返って来た。家族連れでネマガリタケを採集しに来ている。今がシーズンのようで、幾人もの人達がヤブの中に入って這い回っていた。

 縦走路にも多くの花に出会えた。カタクリは花弁が大きく、ムラサキ色に近い。マイズルソウは群落となって続いている。ヤマユリは未だ小さく固いツボミである。種類が豊富、数も圧倒的に多い。

 猿ケ山に近づくと辺り一面ブナ林に変わってくる。大きなブナが多く、新緑の淡い光の中に白くタムシバが光っている。未だ谷筋には大きな残雪が埋まっていた。今北陸の山は一斉に芽ぶき出し賑やかであった。

 猿ケ山山頂は猿の遊び場らしく広い台地状になっている。訪れる人も少ないのであろうか、ひっそりとした山である。

 猿ケ山からの下山道がわかり難い。ヤブに埋まっていて道も不明瞭であり、所々現われて来る大きな残雪に道は閉ざされている。一面ササ原とブナ林が続いている。見事な大きなブナの木が多い。ヤブを漕いで尾根伝いに下って行くと、三角点1221mにたどり着く。

 ここからは鉄塔の巡視路が左右に大きく付いていて、分かり易く迷う事も無い。もう雪もなく急坂を一気に下って行く。鉄塔を2本通過し、谷を横切って3本目の鉄塔に上がり込んでから隣の尾根に乗り移る。ここにはワラビが一杯、拾いながら下って行く。小瀬谷に降り切った所で山旅は終わった。靴を濡らして増水している谷を渡渉して車道に上がり込む。

花に囲まれ、天候に恵まれ、はるばる遠くの山に登りに来た価値のある山であった。雪国の春の山は味わい深いものであった。