<大雪山系縦走>
十勝岳2077m・大雪山2290m ・
トムラウシ山2141m ・オプタテシケ山2013m・
2004年6月24日〜30日 山行者 6人
今回初めて北海道の山へ足を踏み入れた。雄大な景観と沢山の花に出会えた素晴らしい山行であった。火山を主体とした山々が大部分で全体的になだらかな山容には樹木に乏しく険しい岩場は無く緊張するような場所はなかった。残雪が多く花が多くて丁度見頃であり十分に楽しめた。花の時期には多くの女性達に人気のある山である事が良く判った。ただクマの生息地である事と水は全て煮沸する事には神経を使った。又百名山人気により遠方の人達の多いのには驚いた。
【6月26日】 晴れ
28時間の船旅と4時間の車走行によりやっと上富良野の奥にある十勝岳温泉に降り立ったの3日目の朝8時であった。高度は1300mなれど本土での2300mに匹敵し肌寒さを感じる。山々はガスに包まれわずかに富良野岳だけが見え隠れしているが、雨の心配のない天候である。駐車場には溢れんばかりに車が停っていて、さらには登山者が切れ目なく登って行っている。さすがに人気のある山である。
残雪が多くトラバースや雪渓の登りにはアイゼンが必要であろうかと思われたが今回は持参して来なかった。富良野岳への登りでは谷の通過に雪渓をトラバースする所が幾つかあったが沢山の登山者によりルートは安全に着けられていた。
北海道最初の山は富良野岳1912.1mであった。沢山のハクサンイチゲが咲き乱れる登山道の先に狭い山頂があった。頂上は腰を下ろす所も無いほどの登山者で占められている。ガイドに連れられたツァー客などが多く、大阪や東京などからの人達であろう賑やかであった。枚方から来たという女性にも出会った。
上ホロカメットク山を越えた所にある上ホロ避難小屋は2階のある立派な小屋であったがあまりにも小さかった。15人も泊まれば一杯になるであろうと思われ我々は小屋の前にテントを張った。小屋前に広がっている雪渓の溜まり水を炊事に使い、飲料水は総て煮沸した。15年後に発病するというエキノコックスが恐い。ツァー客10人程が小屋に入って行った。
テントの外は1m先も見えないほどの濃い霧に包まれ、北海道での第一夜を静かに迎えた。少し冷え込むようではあったがシュラフは不要のように思えた。
【6月27日】 晴れ
十勝岳・オプタテシケ山
北海道の朝は早く3時にはもう明るくなり始めている。ランプなしでゴソゴソと身支度をし、5時には出発する事が出来た。濃い霧は朝になっても引いて無く、登山道が不明瞭であったがお花畑を分けるロープがきっちりと引かれていて、これに導かれ十勝岳目指して登って行く。すでに先行者が2人いた。
十勝岳山頂は大きな岩石がゴロゴロしている所であり、ガスにとり囲まれ展望は全く得られなかった。ここからの下りがガレキの中の為不明瞭であり、先行者と一緒になって下山口を探した。
美瑛岳まで来るとガスも幾分引いて来て美瑛富士の形の良い山容が見え隠れするようになって来る。その裾野には大きな雪渓が残っていて長いトラバースで通過する。美瑛富士避難小屋の前にはテントが2つ張られていた。オプタテシケ山を往復する登山者のようで、幾人かの人達が下って来ているのが眺められた。
オプタテシケ山山頂は眺めの良い所で、十勝岳やトムラウシ山の展望良好となっていたがどちらも雲に隠れ見えなかった。しかし本日のキャンプ地である双子池ははっきりとすぐ真下に眺められた。広々とした原野が広がっていて、北海道の奥深い山域に入り込んで来た感じがした。ここはクマ出没注意となっていて何ともなく薄気味が悪い。
双子池への下りは1時間30分となっていたがそんなに時間はかからないと思い眺めを楽しみながらゆっくりと下って行くと、最後に大きな雪渓の上に出て来た。かなりの急斜面が長く続いていてアイゼンなしではとても下れない感じがした。側面のハイ松やササにしがみつきながらゆっくりと下って行き、結局2時間もかかり何とかキャンプ地にたどり着いた。
ササヤブを切り開いた幕営地が一箇所だけあった。すぐ側には雪渓の溜まり水が流れていて、溜まりの中では大きな蛙の卵が幾つもあった。夜中中蛙の「クェ、クェ」という大合唱が賑やかに、奇妙な鳥の鳴き声や、いつ出没するかも判らないクマの幻影におびえ、ゆっくりと眠る事が出来なかった。
【6月28日】 晴れ
トムラウシ山
今日は朝から青空が覗いていて晴れ晴れとした気分になる。と同時にここを一刻も早く離れたい気分から、4:30には出発した。昨日下って来たオブタテシケ山の中腹に雲がかかり、山頂に朝日が赤く照りつけゆっくりと夜が明けて行く。格好の良い富士の形をした山である。
三川台に上がり込むともうトムラウシ山は近い。ゴツゴツとした岩場の感じの山肌をこちらに向け山頂には雲が行き交う厳しい格好で立ちはだかっていた。三川台の原っぱは黄金ケ原と言い、広い台地には一面チングルマが咲き乱れていた。白い花の絨毯が見渡す限り続いていて、1時間近く歩いてもまだまだ続くこの花畑に思わず歓声があがる。紅いエゾコザクラが彩りを添えている。秋にはイワイチョウの大群落が黄金色に染めるそうである。
南沼キャンプ地は雪溶けの豊富な水量がトウトウと流れている気持の良い所ではあったが、明日の事を考えヒサゴ沼までもう2時間ほど先に行く事にする。目の前にあるトムラウシ山は岩石の積み重なった険しく厳しい山のようであり、急坂の石積みの道を登って行く。背の低いキバナシャクナゲが幾つも広場に見られた。新得町から登山コースが上がっていて、日帰りで来られた幾つかのパーティが登って来ていた。もう2時に近くこれからの下山は大変だろうにと思われた。トムラウシ山往復に1時間を要した。
ヒサゴ沼避難小屋への下り道は分厚い残雪に覆われていてアイゼン無しでは下れなかった。止むを得ず分岐口にテントを張る事にする。
【6月29日】 晴れ
大雪山
本日のコースは白雲岳までなだらかなコースの為気分的に楽であった。高根ケ原は沼地と原始林と雪渓の広がる広大な原野であり、クマの生息地のため入山禁止の立て札があった。広大な北海道の原野が見られた。
本日の行程中には登山者に一人も出会わなかったが、白雲岳キャンプ地でテントを張っていると一人の若い米人が上がって来た。手振り身振り皆で話し掛けて見ると何とか話しが通じた。明日は我々の通過して来たルートをたどり4日をかけ富良野岳まで行くそうである。
【6月30日】 晴れ
午後からは雨の予報の為早目に出発する。入山5日目今日は下山の日である。旭岳までは砂礫の道の為濃霧時には迷い易い事であろう。旭岳の登りにかかる頃山頂は濃いガスに包まれ視界は数mほど風が強く寒さを感じた。今回の山行最後の山は旭岳、濃い霧の中ではあったが無事に予定のコースをたどり完了出来た事には満足であった。
姿見ロープウエイへ向かう道を下って行くと、ガスも晴れていて沢山の人達が登って来ているのに出会う。40人ほどの団体さんも登って来ている。硫黄の源泉見学などの散策コースもあり賑やかな場所となっていた。
予約していたタクシーで白金温泉に向かう。飛び込みで入った白銀荘は大変設備の整った立派な宿舎であった。大きな浴槽の温泉はこれが本当の温泉かと言わぬばかりの豪華盤であった。素泊まり2600円は安い。一週間ぶりの湯にゆったりと浸かると遠い遠い山を登り終えた満足感がジンワリと湧いて来る。宿の外は濃い霧に包まれ俄かに大夕立が襲って来た。何ともタイミングの良い事か。天気に恵まれた山行であった。初めての山で不安が一杯ではあったが天候に恵まれたのが一番良かった。花々の続く5日間であった。
コースタイム
6/26 小樽(4:00)=十勝岳温泉(8:00〜9:00)−富良野岳(11:55)−上ホロ小屋(15:00)
6/27 (5:00)−十勝岳(6:05)−オプタテシケ山(13:00)−双子池(15:00)
6/28 (4:35)−三川台(10:10)−トムラウシ山(13:00)−ヒサゴ分岐 (16:00)
6/29 (5:00)−忠別岳(9:40)−白雲岳小屋(13:45)−赤岳往復(16:00)
6/30 (5:00)−旭岳(9:15)−姿見(10:00)=白金温泉(12:45)