300名山紀行       景鶴山 2004m

  2012年5月1日〜2日      有志 6人

 尾瀬沼を取り巻く山々には、至仏山と燧ヶ岳が有名であるが、もう一つ景鶴山が屏風のように突っ立って沼を取り囲んでいるのが眺められる。さらにこの山の奥には、平ガ岳から越後駒ケ岳に続く奥只見の山々が北側に連なっている。この辺り植生保護の為登山時期が限られ、又この山には登山道が無い為、唯一この時期のみに登れる山である。連休の中半で沢山の登山者があるものと思われ計画して見る。Kツーリストが前半にツアーを計画している。

5/1鳩待峠(11:00)−竜宮小屋(15:15) 泊 晴

 鳩待峠にはお昼前の11時頃到着した。駐車場は満杯であった。片品村の人達が冬仕事で冬ごもり、春になると里から鳩が上がって来たらやっと下って行けたと言われる峠、今は混雑していた。2日分3500円の駐車料を払う。スキー客が多い。ボードを持った若者達がゾクゾクと引き上げて来ている。至仏山に登ってから下って来た人達、登り3時間で下りは20分だそう。
 山ノ鼻に向かうトレースが幾つも着いている。スキーヤーのものが混じっているため山の鼻に向かったものが良く判らない。山筋を通っているものや沢筋のもの、スノーブリッジが潰れているものがあり夏道通りには歩けない。丁度タイミング良く、地元のガイドさんが一人で本日の泊まりの竜宮小屋に行くそうであり、案内をして貰った。複雑に沢を避けて右岸沿いに下って行った。雪の解けた水溜りにはミズバショウがほんのチョッビリと青い葉を覗かせている。
 山ノ鼻からは一直線にトレースが着いている。木道も所々出ているが、見渡す限りの雪原になっている。午後を過ぎると雪が溶け出し、木道を外すと底なしの落とし穴に踏み込む。恐る恐るおよび腰でトレースを外さないよう慎重に足を踏み出して行く。数人の人達に出会った。
 曇空ながら天気は良くて、至仏山が高く望まれる。景鶴山が左手北側に見えるようになる。案外と小さくて近いように思えるが、ここからは600mの高度差である。頂上から大きなナダレがずり落ちていのが良く見える。
 今夜の泊まりの竜宮小屋は立派な大きなものであった。雪原が一望出来る大部屋が当てられた。天気は下り坂に向かい景鶴山も至仏山もスッポリとガスに包まれ、雪原も寒々と時雨れている。
 泊まり客は我々の他に7人ほど、殆どが写真家のよう。静かな綺麗な山小屋であった。こんな山の中、ヒノキ風呂の熱いお湯に入れるとは思わなかった。食事も良し、花のビデオも見れたし、ユックリと過ごす事が出来た。

     尾瀬ケ原を今夜の宿「竜宮小屋」に向かう(12:56)                   竜宮小屋よりの雪原の尾瀬ケ原(17:00)

5/2 小屋(4:45)−景鶴山(9:30)−小屋(13:00)−鳩待峠(15:40) 曇り

 カイドの話では、「東電尾瀬橋」を渡ったほうが良いとの事だったので、少し遠回りになるがそちらの方に向かう。下田代の小屋までは立派なトレースが着いてあった。小屋は未だ営業していない模様で静か。小屋から橋までは全くトレースは無くて、目標を定めて沢に沿って向かう。単独者2人と合流する。午後からは雨の予報でもあり山裾から上はガスに覆われている。山の概要は昨日良く観察出来たので迷う事は無い。
 橋は立派なもので、雪どけ水がトートーと流れている。橋が無くては渡れない大きな川である。立派な大きな東電小屋が見えて来て、ここから尾根に取り付いて行く。
 アイゼンを装着してからいきなりの急登にかかる。程よい固さで気持の良い登り、不明瞭ではあるがトレースが登っている。笹山への登りは頂上まで登ってから一旦下り、又もや急登となる。ブナ林の中、積雪多くひたすら登りが続く。ガスが垂れ込み、展望は無い。稜線に出ると風が冷たく、雨具を着込む。
 与作岳は横長の山頂。標識だけが雪の上にやっと顔を出していた。ここから巾広の尾根を下る。景鶴山の山頂が風の合間に瞬間見られた。ピラミダルな三角錐の穂が風に棚引き、厳しい豪壮な姿で立っている。風格のある中々良い形をしている。大きな荷を担いだ9人のグループ下って来た。34日で平ヶ岳に行ったそう。元気一杯。単独の2人はいつの間にか居なくなっていた。
 大きな雪渓からいよいよ山頂に向けての最後の登りにかかる。風が強いが寒くは無い。頂上直下の大岩は雪に隠れているため、右側を巻いて稜線に上がる。雪のヤセ尾根は念の為固定ザイルを張る。間もなく頂上であるが標識が見あたら無い。立派な標識があるはずで、その先のピークにも無い。もう一つ先にも無い。やはり最初のピークが頂上のように思える。アイゼンの片足がぶら下がっていた。持参していた写真と照合して見ると、何と標識は風で飛んでいてクギだけが確認出来た。今まで数々の山に登って来たが三角点も標識も目印も無い山は初めてである。23人立てば溢れる程の狭い山頂であった。ガスっていて展望は無いが感激の山頂であった。
 鞍部まで引き返して来てから、ユックリと休憩する。中々険しい山であったが登り終えた事に満足する。ヘエズル山が訛って景鶴山になったそう。文字通り這いずり登った山であった。

 下りは早い。赤テープを回収しながら下って行く。尾根が広い為、ガスっていたら迷い易い所。雨の予報が外れたのか、ユックリと雲が切れて来た。真っ白な尾瀬の沼が一望できようになる。燧ケ岳がゆっくりと全姿を現して来た。会津駒ヶ岳から遠く越後の山々が望まれるようになる。展望を楽しみながら2時間ほどで橋まで下りて来た。
 ここから鳩待峠までが長い。尾瀬沼の木造道の落とし穴にビクビクしながらひたすら歩く。今登って来た景鶴山が全貌を現わせていたが、展望を楽しむ余裕が無い。18:00を過ぎると夜間は通行止になるため車が出せなくなる。
 山の鼻から峠までの登りがこたえる。入山者が多いのか立派なトレースが着いていた。昨日は跨げたスノーブリッジが壊れていて渡れない所が一箇所あった。幸い近くに倒木があり何とか渡る事が出来た。

  沼尻川に架かる尾瀬橋を渡る(5:48)       山頂より奥只見、越後の山々を望む(10:38)        山頂より燧ケ岳を望む(10:38)       景鶴山山頂にて(9:37)
 鳩待峠には16:00頃到着する。待ち受けていたかのように冷たい雨が降り出して来た。本日は11時間の山旅、疲れたが充実した一日であった。出来れば温泉宿にユックリと泊まりたいななどと話していたら、休憩所の人から素泊まり2.900円の宿を紹介された。
 紹介された宿はソバと岩魚料理の大きな料亭であった。沼田市郊外にあり「天然温泉わたすげの湯」とあり、宿屋ではないが料亭の一室を借りる事が出来た。天然流し湯の温泉は何回でも入れるし、食事も大きな食卓を使わせて貰らえるし、親切にもコゴミなどの山菜の差し入れもあった。雨がシトシトと降る中、何とも豪勢な一夜であった。山で出会った9人グループも別部屋で泊まっていた。横浜からの人達、岩魚料理を食べ大いに盛り上がっていた。我々も持参の料理を屋外で作り、大いに飲み食べ大いに盛り上がった。