シカの食害はなぜ拡大するのか?
                                                                                     2011年8月4日   三鍋敏郎

@   近年の砂防ダム建設や森林伐採の際に作られる林道の問題。

 林道建設による伐採は、ほとんどの場合自然林の伐採である。林道の両サイドは地面がむきだしで、建設後すぐに草や潅木が茂ってくる。数ヶ月もすると林道がシカ達の格好の餌場となる。林道沿いに歩けばいくらでも食料が手に入る。たまに猟師が来ても林道を逃げればあっけなく危険回避できる。遠方の餌場への移動も林道を利用すればよい。生活圏が広範囲になる。食料の心配なく子孫繁栄が行われる。

A   積雪の減少で笹が食べやすくなった。

 かって近郊の山々は積雪が深く、冬の食料の枯渇期シカ達は笹を食べるのは難しかったが、近年の積雪量低下で、笹に簡単に近づく事が出来るようになった。シカは50センチの積雪があると、雪上を移動する事が出来ず、笹のある斜面に近づく事は難しい。しかし近年積雪量の減少や林道利用で簡単に笹の斜面に近づく事が出来るようになった。中途半端な積雪で適当に倒れた笹の頭を掘り出し簡単に齧る事が出来る。

 笹が消えたブナ林の現状。

 笹薮や潅木が消えた林床には腐葉土を留める障害物がなくなり、集中豪雨などで腐葉土が流失し地表が剥き出しになる。→ ブナの木が雨を合理的に集積するという樹形が仇となり、根元に集中して大量の雨水が流れ、ブナの根元の表土を洗い流し根が剥き出しになる。→ 腐葉土や表土が流された林床は雨が溜まらず乾燥しやすく植物の種が定着しにくい。たまたま定着し発芽しても若芽はシカの食料となり消滅。→ 乾燥が進むと、やがてブナの枯れ死から倒壊。倒壊後は広大な空間が広がり、さらに乾燥が進むと周辺のブナも枯れ死し倒壊する。→ 連鎖的なブナ林の消滅。

 シカの食害対策

    @     防護柵などによる樹林帯からの食害野生動物の締め出し

    A     広葉樹林帯などに広がる荒地や空地への広葉樹の植林と幼木の食害防止ネット

    B     頭数管理に基づく害獣駆除の民間委託 (出来高払いが成功しているようです)

    C     行政による職業猟師の育成と安全対策の確立

    D     シカ解体処理施設の拡充と要員の養成と職業化

    E     シカ肉流通システム拡充と学校給食へのメニュー化

    F     シカ肉を食材とした調理メニューの普及と試食会の開催

    G     残されたシカの居住地と餌場の確保

    H     シカの頭数管理と行政などによるシカ害の啓蒙活動