300名山紀行 

三本杭 1225.7m

  登頂日  2012.3.29  天候  晴れ   有志  8名

  行程  万年橋(9:00)-御祝山(10:50)-三本杭(12:10)—万年橋(14:50

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 四国屈指の渓谷美で知られる滑床渓谷のある山、四万十川の源流にあたり、足摺宇和海国立公園の一角になっている美しい所だと言う。昔、領地争いで宇和島藩・土佐藩・吉田藩が境界を示すため、三本の杭を山頂に立てたのが山の名の由来だそう。
 宇和島からは川沿いに辿り山奥に入って行く。滑床渓谷への標識が随所にあり、バス便もある観光地になっているよう。サクラの蕾が膨らみ五分咲きくらいであろうか、薄いピンク色の並木が土手沿いに長く細く続くのんびりとした山村風景が広がっている。やっと春が訪れた感じである。
 渓谷の入り口には、ユースホステルやスイス風の山小屋、キャンプ場などがある広々とした開けた所であるが、まだ朝の早い精なのか閑散としている。橋の袂から登山道が始まっている。
 一帯はヒノキの植林地になっている。急な斜面をジグザグに登って行くと林道に出合う。しばらく登るとまた林道に出合う。又登ると3度目の林道に出合いそのまま林道を終点まで登って行くとやっと雑木林の中の登山道に入って行く。蕾の固いシャクナゲがちらほらと、モミ・カシの樹林の中、快晴の青空にヒンヤリとした空気で心地の良い登りである。ユックリと2時間近くを登り詰めた所が御祝山の山頂であった。小さな突起状の尾根の上に小石に囲まれ三角点が剥き出し状態で新旧2つあった。3月の誕生日2人をお祝いする。
 このピークからは緩やかな尾根が自然林の中をユルユルと続いている。ルンルン気分の気持の良い道である。鎧に身を固めた古武士のような感じの大きなアカガシの大木が幾本もある。赤い肌色のツルツルの大木はヒメシャラである。黒いカシの木々の中で一段と輝いている。陽光が照り輝いている開けた斜面一帯は細々としたブナばかりの広い樹林帯となっている。大木は数本のみで、世代がうまく切り替わっている感じ。温かい日差しの中、落ち葉の上に腰を降ろしてノンビリと昼食とする。気持の良い場所、去り難い場所であった。
 アセビとツツジの潅木帯を抜けると開けた平原に出る。一帯は厳重に柵と網に囲まれている。その柵の中は背の低いミヤコササに覆われている。保護地域でシカ公害から守るためで、成程柵の外は一本もササは見当たらなかった。
 そこから一登りで三本杭の山頂であった。一組の夫婦の登山者がいた。広々とした台地状の山頂であり、ここも柵の中で豊富にササに覆われている。1等三角点で展望が良く、春霞みに沈んでいる多くの四国の山並が見られた。三本の杭は見あたらない。

        渓谷の入口(8:55)              緩やかな自然林の尾根を行く(11:13)       ブナの尾根道頂上は直ぐそこ(11:37)      三本杭1226m・一等三角点(13:10)
 熊のコルから谷沿いに下って行く。絶えず岩石が崩れ落ちているのであろう、足場が悪い。小沢の横断には滑石の大岩になっている。瓦礫と足元に注意しながら慎重に下って行くために意外と時間がかかった。甲高い野鳥の鳴き声が谷間に響いている。コゲラが群れている。鳥の多い所、種類も多いようである。
 下って本流に出合う所が奥千畳と呼ばれるこの山の名勝地である。ここから下流4キロほどが遊歩道の整備されている観光名所である。しかし足元はぬかるんでいたりして悪い。谷の中その総てが大きな広い一枚岩で、ナメ・滝・淵と続き、渓流が滑るように流れている。まさに千変万化・深山幽谷の感じで渓谷美が堪能できる。高さ80mもある大滝は幅20mの一枚岩で、水流が輪になって流れ落ちている「雪輪の滝」は圧巻である。夏場は人出でも多いそうであるが今の時期は3組ほどに出会った。

   渓流の中を慎重に渡る(13:42)               雪輪の滝(14:18)
 駐車場には車が数台のみ、静かな山旅であった。日本の美しい自然の景観を総て織り込んだような清々しい美しい山であった。時期が早い為一本も花が無かったのが心残りである。