残雪の氷ノ山を登る

   日時  2012.3.19-20   有志  4名

  コース
    19
日 
若桜スキー場最終稼動リフト11:08出発〜チャレンジリフト上部12:15〜三の丸13:20〜氷ノ山14:43(休憩・昼食時間含む)
    20氷ノ山山頂発7:15〜三ノ丸小屋9:05スキーリフト9:46登山口11:30 (休憩時間含む)  ロスタイム20

  概況

残雪期の氷ノ山は久しぶりである。若桜氷ノ山スキー場のリフトを利用して標高800mから標高1200m付近まで楽々に上がる予定であったが、当日のリフトは1003m止まり。残念ながら最大斜度39度という急斜面のチャレンジコースを徒歩で歩く事になった。壷足で硬くクラストした雪を一歩一歩蹴りこみながら歩く。先行者の踏み跡は荷物が軽いのか間隔が広くて拾えない。
 ようやく1200mにあるリフト降り場まで登り休憩。今登ったチャレンジコースの凍った斜面は下山時にスリップすると樹林帯まで滑落する可能性大である。休憩後リフト終点から霧氷に覆われた樹林帯を登ってゆく。左斜面は大木のブナ林帯で氷の花を咲かせて輝いている。標高1300m付近まで登ると尾根道は穏やかになる。
 霧が深く視界は数十メートルほどである。地形を確かめながら慎重に尾根を拾う。特に氷ノ山南尾根は駄々広い尾根の連続で、ホワイトアウト時の彷徨徘徊による遭難が頻発している。しかし本日は幸いな事に稜線部の雪は硬くクラストし新雪が吹き飛んで、前日までの足跡やスノーシュー、スキーの痕跡が部分的に残っているので進行方向の判断材料になる。この場面で気を付けなければならない事は、赤テープ類に惑わされて進むととんでもない方向に誘導される恐れがある。赤テープは広い雪田をリングワンダルングの最中に付けられた可能性も疑わないと駄目だろうと思う。特にショッキングピンクのテープには警戒が必要。
 氷ノ山稜線を覆い尽くしている笹藪や潅木は残雪に深く埋もれて高木やダイセンキャラボクなどが雪面から伸び上がっている。
 標高1448mのピークを越えた辺りで我が労山のKaさんらのパーティーと遭遇する。下山途中だという。エールを交わして別れるが、この辺りで尾根は東に方向を変える。コルを越えるといよいよ氷ノ山本体の登りになる。ガスの中に建物が霞んで見えて来ると山頂は近い。
 山頂の避難小屋には中高年の男22名の先客が居た。小屋の温度計は氷点下1.5度になっていた。私達が荷物を下ろして休んでいると、先客の女性の一人が「私達は癌患者の集まりなの、3人が癌患者で一人だけ健康な人が居るのだけれど、それが誰だか判りますか?」私が即座に「この方が健康な人でしょう」と答えると「良くお分かりですね、お医者さんですか?」「婦人科専門ですけど・・・」「流石ですね!」と本気にされたので、いまさら冗談とは言えなかった。健康な人が赤の他人にそんな質問をする筈は無いので、消却法で残った女性を指名しただけなのに。 彼女達が下山してしまうと、小屋は私達だけになった。薄暗い室内は予想以上に寒い。予定よりも早く着いたので時間を持余してしまった。 夕食後に小屋の外に立つと、満天の星空が広がっている。街の明かりも眼下に煌めいている。小屋に戻り寝袋に入る。残雪歩きで疲れていたのか何時の間にか眠っていた。


              ブナ林の霧氷(12:41)                               山頂から見た夕日(17:57)

 翌朝、風の音で目が覚める。小屋に打ち当たる風がビュウービュウー唸りをあげて抜けてゆく。太陽が出る頃にはもう少し収まるだろうと再び眠りにつく。 予定の時間に起きて表に出るとタイミングよく御来光と遭遇。Nishiさんに言うと「もう少し早い時間はもっと綺麗でした。コントラストもはっきりして良かったですよ」と仰る。さすが早起は3文の徳だと納得し、私は少しがっかりする。
 朝食のラーメンと餅を頂いて旅立ちの準備。昨日より気温が低いのでアイゼンを装着してもらった。昨日ホワイトアウト状態で展望は無かったのだが今日は展望が開けている。方向も確かめず、「あそこに見える穏やかな尾根を下りましょうと」宣言し出発する。スキー場の上部は急斜面で難しいと考え、氷ノ山山頂の北西にある穏やかなピークから西に伸びる稜線を下るつもりであった。少し進むとNishiさんが「ちょっとおかしいですね」と仰る。地形図を見ると昨日歩いた尾根にいる。「こうなったら居直りましょうか」と下山コースを考える。ホワイトアウト時はあれほど慎重に地形図を見たのに展望が良すぎると風景に頼って軽率な行動に出てしまった。
 仕方なく計画時に考えていたエスケープルートの尾根に進入するが、瘠せ尾根で雪屁の張り出しが強くしかも雪が不安定なので引き返すことにする。20分のロスタイム。
 尾根に引き返し、昨日歩いた尾根の逆コースを忠実にたどる。昨日は樹木に霧氷の結晶がくっきりと見えたが、今日は陽光で融けて透明なアイスキャンデー状態である。稜線は雪が締まって歩き易い。
本日は祭日なので登山者が多い。山スキーやボードなどを担いで登って来る人、スノーシューを履いて歩く人、様々な人達が上がってくる。昨日苦労して上がった急斜面のスキーゲレンデに到着すると。今日はリフトが動いている。下りリフトに乗ろうとしたが断られる。仕方なくクラストした急斜面を下るが、6本爪のアイゼンは利かない。キックステップも雪が硬くて利き難い。結構苦労して下る。下部は雪が柔らかいので踵を蹴りこんで楽しく歩いた。スキー場では今期最後のスキーを存分に楽しんでいる家族連れや若者達の、はしゃぎ声が辺りにこだましている。

      山頂よりのご来光(6:08)                 南尾根の風景(7:00)                 南尾根を行く(7:38)             南尾根を行く(7:57)